大分県

熊本地震乗り越え、阿部牧場の「ASOMILK」復活

2016年4月16日深夜に発生した熊本地方を震源地とする地震は、最大震度7を観測。阿蘇市では、震度6弱を観測した。
この地震で、阿蘇市三久保の「阿部牧場」では、牛乳の生産に必要な水を絶たれたが、2016年5月2日に仮稼働に漕ぎ着け、道の駅「阿蘇」の店頭に「ASOMILK」が並んだ。待望の阿部牧場の”真っ直ぐミルク”「ASOMILK」の復活だ。
そして5月5日、待望のフル稼働の日を迎えた。
「ASOMILK」は、こだわりの低温殺菌が自慢で、ボトルには「63℃30分」と記されている。
代表取締役の阿部寛樹さん(39歳)は「搾りたての風味やコクを損なうことなく、牛乳本来の味を楽しんでもらいたいから、63℃で30分間かけて殺菌するんです」と。
阿部牧場の「ASOMILK」といえば、豪華寝台列車「ななつ星in九州」だ。「ななつ星in九州」といえば、九州の各地の名店のシェフが列車に乗り込み、直接腕をふるう豪華料理が味わえることで話題となったが、その中で阿部牧場の「ASOMILK」も提供されたことで、人気に拍車がかかった牛乳だ。
ほのかな甘さが漂い、搾ったばかりのような風味が鼻先をかすめる。コクがあるのに意外にサラッとした感じで、雑味もなくもたつかない。
阿部さんは「65℃を超えるとタンパク質が変性して、粘り気がでてしまうんです」と。コクがあるのにこのスッキリしたのど越しは、低温殺菌が故なのだ、と納得。
その阿部牧場では、搾乳製造や機器の洗浄に15トン、工場のフル稼働に25トンと、一日に最大40トンの水を必要としてきた。しかし、4月16日の地震により、命綱ともいえる水を絶たれた。
「水がなければ製乳はできませんからね。でも搾乳は行いました。乳を搾ってやらないと牛がダメになりますから。搾った乳はすべて廃棄処分ですよ」と阿部さんは振り返った。

そして水の確保が急務、と翌日の17日から湧水を汲み、牧場まで運ぶことにした。1トンタンクを積んだダンプで、連日、一日に10数往復。さらに友人が2.5トンタンクを貸してくれるなどして、機器の洗浄は、なんとか可能になった。
市からの避難勧告が避難指示に変わってからは、40人近いスタッフが集結。牧場事務所に寝泊まりしながら、牛の世話と水の確保に全力を挙げる。
そんな中で阿部さんは、「これではらちが明かない、もっと大きなタンクが欲しい」と探し求めた。その結果、4月24日、望むタンクが福岡にあった。
「望みどおりの20トンタンクでしたから、すぐにキープしました」と阿部さん。翌日の25日早朝には、代金が振り込まれた。代金を振り込んでくれたのは、東京在住の阿部さんの友人だ。
阿部さんは「その友人がインターネットで募金を募ってくれたんです。牧場の事や牛の事で手一杯だっただけに助かりました」と感謝の気持ちでいっぱい。
早速4月26日、20トンのタンクを据えるための基礎工事に取り掛かった。とはいうものの、福岡の運送会社からは「タンクを牧場まで運び込むのに一週間は必要だろう」と。
「それでは間に合わない」と阿部さんは、運送会社の友人に相談。その友人は、夜通し走って、牧場へタンクを運んでくれた。
これが、夜通し走って届いた20トンのタンクだ。
27日の夕方にはタンクへの配管を終え、タンクに水を貯める準備が整う。
28日には水道も治り、チョロチョロと出始めた。29日には、タンクも満タン状態に。これで「ある程度の水が確保できた」と、5月2日に工場を仮稼働させた。

とはいえ、「製乳を始めると水が一気に減ってしまうので、これではまだ十分ではない」と阿部さん。
次なる手立てとしたのが「湧水を直接牧場へ引くこと」。幸い、阿部さんの知人が湧水を分けてくれることになっていて、その湧水は水質検査も通過した。

5月2日、再稼働と同時に、配管に必要な部材を調達し、5月3日、1.2kmほど離れた水源から牧場まで、水道管を自力で敷設。引き続いて湧水のポンプアップ、水道管への接続とすべてを5月5日の午前中に終え、水の供給体制は万全となった。
当初、5月9日としていたフル稼働は、5月5日に達成となった。
これにより、牛乳だけでなく、人気のヨーグルトの製造もスタートした。
地震で負傷した乳牛は一頭だけで、230頭超の牛たちは事なきを得た。
阿部牧場のシンボルは、赤いマフラーの躍動感のある乳牛。再びこの保冷車にも出番がやってきた。
しかし阿部さんは「体制は整いましたが、納品先のショップや旅館等も被害を受けていて、例年通りの出荷は厳しいですね。今は、皆さんが一日でも早く復旧することを願います」と。

そして、「この余震が続く中、阿蘇へ来てください、とは言えないですよね。だからネット販売にも力を入れます」と阿部さんは前を向く。
___________
阿部牧場ネットショップ
搾りたてをお宅まで

阿部牧場
http://www.aso.ne.jp/abe-farm/
住所:熊本県阿蘇市三久保47-1
電話:0967-32-0565

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