鹿児島県

薩摩藩英国留学生『長沢鼎』が伝える歴史あるワイン

▲森孝晴博士

明治維新の薩摩にゆかりのあるカルフォルニアワインを今も味わえる事を、皆さんはご存じでしょうか?
先日、そのゆかりのあるワインを鹿児島市金生町にある山形屋で購入。マスカットのワインを買いました。千円程度のお手頃ワインだったのですが、非常に美味しく飲ませてもらいました。
このカルフォルニアワインを作り上げる事になる、薩摩藩英国留学生からカルフォルニアのワイン王に登り詰めた『長沢鼎』について、今回は鹿児島国際大学の国際文化学博士で鹿児島サンタローザ友好協会会長の森孝晴博士に、【長沢鼎とワイン】というタイトルで寄稿していただきました。

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【長沢鼎とワイン】

薩摩藩英国留学生の最年少者長沢鼎は、最終的には一人だけ日本に帰らなかった。米国カリフォルニア州サンタローザ市で1934年に82歳で亡くなっている。鹿児島市生まれで下荒田周辺に育ったので、下荒田町の甲突川河畔に長沢の顕彰碑がある。なお、遺骨は故郷に戻っており、市内の興国寺墓地に眠っている。
長沢は変転する人生の中で極めて勤勉に生きた。その源泉となったのが薩摩の武士道精神である。もともと藩から求められたのは造船の勉強であったが、アメリカに渡ったことで方向が変わりなぜかワイン製造に生涯をささげることになった。しかし、持ち前の何事にも全力を傾ける性格と薩摩仕込みの武士道精神は、彼を「ブドウ王」にまで押し上げることになる。
1865年にイギリスに派遣された長沢はロンドンから北部のアバディーンに送られてこの地で2年間猛勉強した。その後宗教家のトマス・レイク・ハリスの導きでさらにアメリカに渡った。ニューヨーク州にいる頃にすでにブドウ栽培とワイン製造に関わっていた長沢は、養父とも言えるハリスの指示に従って、彼と共にワイン産業が起こっていたカリフォルニアに移住し、本格的にブドウ園の管理とワイン製造に取り組んだ。
実は長沢には研究者的な部分が多分にあり、世界的な植物学者ルーサー・バーバンクと協力して様々な実験を進め、ワイン醸造用のブドウの品種改良などに努力した。お陰で、カリフォルニア州のワインの品評会で第2位(事実上のアメリカで第2位)を獲得したり、カリフォルニア大学の研究に協力したり、万博の時には農業関係の出品物の審査員も務めた。したがって、長沢のワインは質が高く、海外にも輸出されて好評を博した。
禁酒法や農園の火事などで苦しいことも少なくなかったものの、長沢鼎は、カリフォルニアワインの偉大なる先駆者として今でも尊敬を集めている。まさに士魂商才を地で行くようなぶれることのないまっすぐな人生だった。最後まで薩摩藩士であることを捨てなかった長沢は、カリフォルニアに60年近く住みながら、アメリカ人にもキリスト教徒にもならずに、生涯武士道精神を支えとして生き抜いたのである。

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