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『南の館の物語』岩城朋子さんインタビュー

「いまの自分だからこそできる。演劇だけやっていた三十代の頃に今回の仕事が来たとしても、いまと同じ気持ちで臨むことはなかったと思います」
7月25日、太宰府館で催される『太宰府伝説の旅』の第1部、語り芝居『南の館の物語』について、舞台役者の岩城朋子さんにお話を伺った。

《岩城朋子プロフィール》
幼少からクラシックバレエや日本舞踊に親しむ。ダンサーとして活動する一方、30歳を過ぎてから演劇の道を志し、劇団のオーディションを経て本格的に舞台役者としてのキャリアをスタートさせた。2007年、天神イムズで催された「世界の飛び出す絵本展」での読み聞かせをきっかけに、声色を使い分けて複数の役を演じる「語り芝居」という新境地を拓く。2013年には歴史ナビゲーター井上政典氏の戯曲「骨の声」に筑前琵琶奏者 寺田蝶美氏と共に出演し高い評価を得た。

《南の館の物語》
太宰府在住の日本語教師、前野りりえ氏の作品をベースに、岩城朋子氏が独自の視点で脚色を加えた語り芝居。各地に点在している菅公伝説を通じ、菅原道真公と幼い姉弟の太宰府での暮らしを、道真公の娘である紅姫が物語る。

・岩城さんにとって『南の館の物語』とは

語りの部分の紅姫は、歳をとった紅姫の回想録という形になっています。道真の死後、紅姫がどうなったかについては、四国にいる一番上のお兄さんのもとに身を寄せたという説もあるし、地元で幼くして亡くなったとか諸説があるんですが、今回はあえてお婆さんになった紅姫が、自分の孫たちに思い出を語っているというお話にしています。

紅姫はたった2年くらいしか太宰府にいなかったわけなんですが、まだ幼い弟やお父さんと一緒に、非常に近しい状態で過ごせたわけなんですよね。ですから、決して楽ではなかったし、悲しい思い出のほうが多いにしろ、長い時間を経て望郷の念というか、太宰府を故郷という風にとらえてほしいと思ったんです。

原作を書かれた前野さんは、あまり私にははっきり仰られなかったんですが、悲しい物語としての一面を前提に書いておられたようなんですね。でも私としては、幼い弟がなくなり、お父さんがなくなり、そして一人ぼっちになった紅姫も最後には死んでしまう物語では、あまりに希望がないと感じたんです。


▲光姫忌の公演。寺田蝶美氏と。


▲歴史ナビゲーター井上政典氏(右から2番目)と共に。

戯曲『骨の声』(Facebookページ)

井上さん(井上政典氏『骨の声』作者)さんが歴史を語るとき、よくテーマとして選ばれることの一つに、たとえ登場人物が短命にして亡くなったとしても、その人の人物を通じて自分の生れた土地だとか、日本という国に対する愛着を感じてもらいたいという点があります。私も数多くの作品に出させていただく中で、だんだん同じことを考えるようになりました。ですから、紅姫には孫たちに、おばあちゃんの故郷は太宰府なのよと語ってほしいと思います。いま太宰府に住んでいる人たちにも、自分たちが紅姫の愛した土地に住んでいることを感じてほしいと思うんです。


・今回の公演を行うにあたって、特に難しいところがありましたか

たった1人で舞台に立つわけじゃないですか。ましてや、衣装替えがあったりとか、照明がバンバン変わるとか、そういった演出はないわけですよ。そういう中でお客さんが飽きないようにするためには、視覚的な効果に頼るのが一番なんです。でも今回はそれが望めないので、音楽の力を借りるしかありません。とても演劇的な世界観をもった、私の大好きな和田名保子さんというオカリナ奏者の音楽を、ふんだんに取り入れることで補っています。

ただ、隣で生で演奏してくれるわけではないので、特別にお願いして彼女のCDを編集させていただきました。膨大な量の音源の中から、曲の盛り上がりの部分を抜き取って強弱をつけて、私のセリフのここからここまでに被せて編集してという気の遠くなるような作業を、全編に渡って私の発案でやっています。ですから、実際に編集に携わったスタッフの方と、指示通りに実行する音響の方がてんてこ舞いですね(笑)

逆に普通の舞台であれば、私の語りに音響の方が合わせてくれる形になりますが、今回は勝手に大きくなったり小さくなったりする音楽に合わせて、演じながら尺を調節しなくてはなりません。ですから、当日はいつにも増してライブ感を味わっていただけると思います。
自信作です、どうぞ観にいらして下さい。

▼『太宰府伝説の旅』
菅原道真公の娘 紅姫が語る太宰府での日々

第1部
語り芝居『南の館の物語』
原作 前野りりえ 役者/脚本 岩城朋子
音楽 和田名保子
第2部 子育てシンガー monコンサート

日時 2015年7月25日 土曜日
時間 14時〜16時(13時30分開場)
会場 太宰府市宰府3丁目2-3 太宰府館3Fまほろばホール
定員 200名
入場無料(要事前申込み)
問い合せ 092-920-5501(担当:小川、有田)

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