□納豆とスープを合わせた専用たれに麺をくぐらせて「いたばします!」□
※『昇家』は2016年3月末日をもって、店主・山崎昇さんの新たな夢のため、惜しまれつつ閉店しました
東京都板橋区中板橋のラーメン居酒屋『昇家』を紹介する。
深夜の「〆の一杯」を求める人々に愛され続けている店だ。
■話題狙いのキワモノじゃなかった『納豆つけ麺』
テレビ東京の『出没!アド街ック天国』で中板橋が特集されたときに『薬丸印の新名物』に選ばれたのが、この店の『納豆つけ麺』(600円)。醤油ベースの『支那そば』を特製の納豆たれにつけてズルっと行く一品である。
板橋区の地域編集長・タハラは番組を見ながら「受けを狙った『一度食べれば十分』のメニューかな」と思ったのだが、実際にズルっ、チュルっ、ネバっと行ってみて、意見がコロっと変わった。新名物、異議ありません!
▲別皿の『納豆たれ』は提供時にすでに味が調整されている。食べ進むうちに薄くなることを見越したチューニングがおみごと
■ツマミやご飯ものも充実
▲それぞれの値段に注目
▲人気のツマミ『若鶏肉タタキ』(500円)
必要最低限に火を通した鶏肉をポン酢でいただくひと皿。量もたっぷりだ。この店では「高いほう」のメニューである。
▲『昇家丼』(500円)
店名を冠した『昇家丼』は、チップ状に刻まれたチャーシューの柔らかさが際立つ。丼だけだとあっさりしているが、付け合せのザーサイ・スープと合体することで、おいしさが立体的に広がる。
▲行儀はよくなくても、混ぜちゃうのがいちばんうまい
■ご主人・山崎昇さんにお話をうかがった(本当は「崎」はつくりの上部分が「立」)
『昇家』の開店は1992(平成4)年。店主の山崎昇さんがひとりで切り盛りして、今年で24年めを迎えた。
値段の安さについて尋ねると「一度も値上げしていない」(山崎さん)とのお答えが。開業時の消費税は3%だったはずだし、昨今の食材の値上げも厳しいのに。「屋台の支那そばを基本と考えてるから、一杯800円なんてもらえないよね」と涼しいお顔である。
『支那そば』の名称を大切にしていることからも想像できるように、この店のスープはきれいに澄んでいる。強い自己主張こそないものの、盤石の礎を感じさせる味だ。
▲大鍋で煮込む鶏ガラがスープの足腰となる
『納豆つけ麺』という答えを想像しながらお店の人気ナンバーワンメニューについて質問すると『ワンタンメン』(650円)というお答えが。「開業するまえに仕事を覚えさせてもらった四谷(東京都新宿区)の『支那そば屋 こうや』の味を引き継いでいます」とのこと。ちなみに『こうや』は「東京 ワンタンメン」と検索すると真っ先にヒットする有名店だ。
ワンタンは「雲(を)呑(む)」と書くことでもわかるように、一般的には淡くて儚い食べ物である。しかし『昇家』のものは具がしっかり詰まっていて、食べ応えがある。シューマイ寄りのワンタンとでも言おうか。『こうや』に忠実なワンタンで、これが5個入っている。
スープは『こうや』よりも透明度が高い。これは山崎さんの「支那そばは澄んでないとね」というポリシーによる研鑽の成果だ。
▲『昇家』のピカイチ『ワンタンメン』(650円)。『こうや』より350円も安い
▲澄んだスープと、半分に切っても自立するワンタン
▲酢醤油でいただく『皿ワンタン定食』(600円)。ワンタンがごはんのおかずになるなんて!
■取材後記
タハラは24年まえの初訪問のときから、ご主人を「ただ者ではない」と思っていた。
口数少なく控えめな振る舞いのなかに何か一本『筋金』が通っていると感じていたのだ。服の上からでもわかる引き締まった肉体と無駄のない動きから、勝手に「ともすれば忍びの者。伊賀か、甲賀か?」と想像を膨らませていた。
長年の疑問を解消すべく「お店を始めるまえは何を?」と聞いてみた。お答えは前述の通り「『こうや』という店に」だった。あれ、ふつう? いや、『こうや』は立派な経歴ではあるんだけど、支那そばでこの身体はできないでしょう。
▲店主の山崎昇さん。ちょっとシャイ? 右肩の黒板にはその日のおすすめメニューが
取材を続けるうちに、山崎さんがぼそっと漏らしたひと言に膝を打ちたくなった。「じつはレンジャー部隊に……」。自衛隊でもいちばん厳しいと言われるところじゃないですか! それなら、ずっと感じていた『筋金』にも合点がいこうというもの。
『昇家』の支那そばのスープに潜む「ピンと張った何か」の秘密にちょっとだけ近づけた気がした。
▲店内はログハウス風。「きこりさんの家」の貼り紙があるが、ウミガメもいる
※価格は消費税込み
■074 取材日:2015.10.17
『昇家』(2016年3月に閉店)
住所:東京都板橋区中板橋17-5
グーグルマップ → <https://www.google.com/maps/d/edit?mid=z1pQXw3tUwTM.k_u-Bx_yw_Go|こちら>の e(小文字 ピンク色)
最寄り駅:東武東上線『中板橋』駅 北口から徒歩約4分
電話:03-3964-2830
営業時間:18時から26時(祭日は24時まで)
定休日:日曜日
席数:5卓 20席
※喫煙可
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