時間の流れが変わる場所
東京都板橋区本町にある『いたばしボローニャ子ども絵本館』(以下『絵本館』)を紹介する。最初に書いておきましょう、「ここを知らないのはもったいない」と。
『絵本の図書館』や『子ども図書館』は東京都内に数館あるが、海外の絵本を中心に2万冊以上の蔵書を誇る図書館となると全国でも稀。その「唯一」とも呼べる施設が『絵本館』だ。
▲ぬくもりを感じさせる入り口
『絵本館』は、学校のような角張った建物の3階にある。建物の前身は小学校(旧板橋第三小学校)で、校舎をそのまま利用する形で板橋区が引き継いだ。いま絵本館になっているのは『ランチルーム』という、教職員と生徒が触れ合うための部屋だったそうだ。
▲ステンドグラスは小学校時代からのもの
▲書架は海外絵本の宝の山
▲知ってみれば、たしかに学校っぽい
この図書館には、およそ85ヵ国の絵本が集められている。そう、ここは絵本に乗って世界旅行を楽しめる『想像力のエアポート』。
▲『仮訳つきえほん』のコーナー
このコーナーには、ボランティアの手による簡単な訳のついた絵本が集められている。棚プレートにはスロベニアやアラブ首長国連邦なんて国名も見える。
▲『仮訳つきえほん』の一例(スペイン)
外国語がわからなくても、仮訳を手がかりに絵本を楽しめる。
▲原本と翻訳本のセット
日本の絵本が海外に翻訳・出版されたもの、またはその逆のパターンの本をセットで集めたコーナーもある。2冊を読み比べることで、日本語だけでは気づかなかった新たな発見も。
■オープンな図書館
『絵本館』には、『海外絵本の充実度』と同じくらいユニークな特徴がある。それは、とてもオープンな図書館であることだ。
ここを利用するための条件は『地球人であること』。板橋区に住んでいない人もウェルカム。国籍も年齢も不問なのだ。
▲読み聞かせなどにつかわれる小部屋
靴を脱いで、柔らかいタイルカーペットにじかに腰をおろす。腹ばいになって読んだっていい。
▲別の角度でもう一枚
本棚の上には手作りの『ぐりとぐら』が。
▲赤ちゃんも、お母さんも
▲カレンダーも手作り
毎月のカレンダーは、ボランティア団体『いたばしてのひらの会』からの寄贈品。この図書館のなかにあるすべてのものが、優しく、懐かしく、心地よい。
▲きむらゆういちさんの絵本
3月には『あらしのよるに』や『ひとりでうんち』などの作者・きむらゆういちさんご自身による読み聞かせ会が行われた。
■この図書館ができた経緯
板橋区とボローニャ市(イタリア)の関係の始まりは、1981年に板橋区が『ボローニャ国際絵本原画展』を開催したことから始まった。その後は絵本を通じた交流が続き、2004年9月に『絵本館』が開館され、2014年には友好都市交流協定が結ばれいる。
イタリアのボローニャでは毎年春に『ボローニャ国際児童図書展』という見本市が開催される。ここに出展される図書は「一般的な『良書』にとどまらない、意欲的・クリエイティブな作品が多い」(『絵本館』)そうだ。その出展作品が板橋区に寄贈されるため、『絵本館』の蔵書には先鋭的な絵本が少なくないのだ。
■翻訳コンテスト
板橋区は毎年『いたばし国際絵本翻訳大賞』を実施している(2015年4月現在で21回)。これまでの受賞作は『絵本館』に展示されていて、誰でも読むことができる。
▲英語・イタリア語の両部門合わせて応募は1001作品
▲課題となった原書と合わせて受賞作を読むのも楽しい
▲元は小学校の校庭だった広場
午後のみ地域の住民を対象に開放されている。
▲同じ建物の2階には『板橋区公文書館』がある
■関連記事 → 『あなたの記憶がここにある 公文書館へ行こう』
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『いたばしボローニャ子ども絵本館』
※閲覧のみ。絵本の貸し出しは行っていません
いたばしボローニャ子ども絵本館のサイト → こちら
Facebookページ → こちら
住所:東京都板橋区本町24-1(3階、エレベーターあり)
グーグルマップ → こちらのU
最寄り駅:都営地下鉄三田線『板橋本町』駅・A1出口から徒歩約5分
東武東上線『中板橋』駅・北口から徒歩約15分
国際興業バス『大和町』から徒歩7分『上宿(かみじゅく)』から徒歩約5分
電話:03-3579-2665
利用資格:全人類
開館時間:10時から17時
休館日:月曜日(祝休日と重なるときは直後の祝休日以外の日)
月末日(土・日・祝日と重なるときは開館し、直後の土・日・月・祝日が休館となる)
年末年始
蔵書冊数:約25,000冊(世界約85ヵ国)
※建物内に車椅子用のトイレあり。授乳スペースあり
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【032 取材日:2015.3.26】
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