グルメ

「た」は『大仏サブレー』と『たぬき』の「た」

□『大仏サブレー』と『東京大仏』のツーショット□

東京都板橋区赤塚の洋菓子店『フランス製菓』を紹介する。
店構えにも商品のケーキにも『昭和』が生き続ける実力派の一軒だ。

■板橋・赤塚土産として人気の『大仏サブレー』

サブレーというとハトやヒヨコの形をしたものが有名だが、板橋区のサブレーは大仏様!
『大仏サブレー』(1枚110円、9枚、12枚、20枚、30枚の箱入りもある)には、多くのサブレーのような「固さ」がない。サクッと噛むと口のなかに広がるバターの風味。それを追うように顔をのぞかせるレモンの香り。ありがたくも楽しい一枚なのである。

ここで素朴な疑問。どうして大仏?
店主の山田賢二さんにうかがうと「いまから30年以上まえ、父の代のときに地元の商店街(赤塚一番通り商店街)のシンボルが大仏に決まったので、それに合わせて考案したようです」とのこと。
そういえばお店から歩いて15分ほどの場所にある乗蓮寺には、坐像としては日本で三番目に大きな『東京大仏』が鎮座ましましているんだっけ。
盆暮れのお届け物や板橋・赤塚土産として重宝される『大仏サブレー』は、区民が選ぶ『板橋のいっぴん』のひとつとしても親しまれている。

▲包装紙のイラストもかわいい。9枚入りは1100円

▲左上から時計まわりに『ごま』『大仏』『コーヒー』『ちーず』『チョコ』『くるみ』の各種サブレー。すべて1枚100円。『大仏』だけちょっと大きい

■絶滅危惧種? 『たぬき』に会える店

昭和中期には多くの洋菓子店でつくられていた『たぬき』というケーキ。徐々に作り手が減り、いまやお目にかかれる店は東京じゅうを巡っても10軒にも満たないらしい。
そのうちの貴重な1軒がここ、『フランス製菓』なのだ。

▲『たぬき』(280円)。バタークリームをつかうのが大きな特徴。耳はアーモンドだ

卵やお酒などを入れない「昔ながらの、バターとシロップで泡立てるだけのバタークリーム」(山田さん)が『たぬき』の素朴さの秘密らしい。「子供の頃に食べて、青年になるとバタークリームからすこし遠ざかって、もっとお年を召すと懐かしさでまた食べる」方が多いとか。3世代ケーキ、ここにあり。

▲『ぶーちゃん』(280円)が仲間に加わった! ピンク色はイチゴから。ショーケースのガラス越しに目が合うと買わずにいられない

■郷愁だけじゃない「技あり」ケーキの数々

「昭和の残り香」や「懐かしさ」といった視点で語られることの多い『フランス製菓』だが、そうとうなテクニックとアイデアを兼ね備えたケーキ店でもある。

▲大納言入り抹茶ロールをベースとした春季限定の『さくら』(360円)。さくら餡は『あんみつ』が『板橋のいっぴん』に選ばれている『片山商店』製。

▲『板橋のいっぴん』つながりでもうひとつ。かりん糖が選出されている『中野製菓』の社長さんは『フランス製菓』の熱烈なファンでもあり、毎年バースデーケーキを特注している。ロゴの筆勢まで再現する技術に注目!

▲グランドピアノを模した『ピアノ』(1600円)。値段からは想像できないほど大きい

▲オムライスに字を書くドラマが話題になると、こんなケーキが登場する。『オムライス』はフルーツ・カスタードクリーム・スポンジをクレープでくるんだ一品で1200円

■生クリームが結んだ縁

お店の歴史について山田さんに教えていただいた。
「元は池袋(東京都豊島区)にあった『フランス製菓』という洋菓子店。私の父がそこで働いていて、店主の娘さんと結婚し、暖簾分けのような形で現在の下赤塚に店を構えたのが1968(昭和43)年です」(山田さん)
「フランスに行けるくらいがんばろう」というのが店名の由来だとか。外国旅行の敷居が高かった時代ならではの話だが、みごとにフランスへの社員旅行を実現したそうだ。

先代のご夫婦のあいだに誕生したのが現在の店主の賢二さん。いっしょにお店を切り盛りされている奥さんのキクエさんがおもしろいことを教えてくれた。
「お父さんがお店をされていたときにアルバイトとして練馬区から通っていたのが私なんです。じつは私、甘いものが苦手だったんですが『ここの生クリームなら食べられる! こんなにおいしいものがあったなんて!!』って驚きました」(キクエさん)
「甘いものがダメなのにどうしてケーキ店でアルバイトを……」というツッコミはさておいて、甘くてい~い話じゃないの。

▲『フランス製菓』三代目の山田賢二さんとキクエさんご夫婦

▲包装紙にも味があります

▲『フランス製菓』外観

関連記事
フランス製菓の『ショートケーキ』と『昭トケーキ』
狸とチョコとバタークリームの、ディープな関係(大分県地域編集長 ひょうたんくん)

※価格は税込み表示です

グーグルマップ → こちらのj(小文字・ピンク色)

■081 取材日:2016.3.14
『フランス製菓』

住所:東京都板橋区赤塚2-2-5
最寄り駅:東武東上線『下赤塚』駅 北側出口から徒歩1分
営業時間:9時から20時
定休日:毎週火曜日と第3水曜日(変動あり)

関連記事

  1. 「たいせつ」のちいさなパン屋 ゆめしょうてん
  2. 『つつつ』の仲間たち1 まるみず組
  3. チャオ、ボローニャ! 板橋区役所で開催中
  4. 『コーヒーの月』10月に『珈琲羊羹』はどうよ?
  5. 61年めの春告魚・『惣菜処 日乃出屋』 板橋区
  6. あなたの記憶がここにある 公文書館へ行こう 板橋区
  7. 絵本と想像力が翼 85ヵ国の世界旅行 板橋区
  8. これぞ町のおでん屋さん! 板橋区・太洋かまぼこ店

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP