西鉄二日市駅前、インド料理店『ラメス』はスパイスの使い方がとても丁寧で、日本人向けに味を整えていながら本場ネパールの味も楽しめると評判のお店だ。そのせいか、お客さんの中にはインドやネパールの方と思しき顔ぶれもチラホラ。
オーナーのバンダーリ・リシ・ラムさんは、ネパールはポカラ出身の29歳。てっきりラメスが本名なのかと思いきや、これはバンダーリさんのニックネームなのだそう。
「神様の子供というような意味です。理由は・・・わたしの背が伸びなかったから」と、ちょっと恥ずかしそうに笑った。このバンダーリさんの笑顔がラメスの売りのひとつ。カレーと笑顔を運ぶお店だ。
オープン当時はネパール料理店としてスタートするはずだったものの、あまりお客様の反応が芳しくなかったのでインド料理に変更したとのこと。多民族国家であるネパールは、北をチベット(中国)、南をインドに挟まれた横に長い国で、近隣から文化的な影響を受けている。料理も共通しているものが多く、なにより手食文化(箸やスプーンなどを使わず手で食べる)の国だ。ただし、インドのようにナンやチャパティは用いない。主食はもっぱら炊いた米やその他の穀物だそう。
▲手前がインド、奥がネパールの国旗。
この記事では、ラメスのメインメニューであり、今や誰もが知るところのナンやチャパティ、タンドリー料理などのインド料理には触れない。あえてネパールにおける食事の流儀と、お店の裏(むしろ表?)メニューとでもいうべきネパール料理を紹介したい。
▲まずは念入りに手を洗う。お冷と一緒におしぼりの提供はあるものの、フロアの壁に手洗い用のシンクが備わっているのは、食前に手を洗うため。
ビリヤニ(バスモティライス 4種類 850〜950円)は、日本でいうところの赤飯のようなもので、お祝いの席には欠かせない。2枚目の画像はライタというヨーグルトサラダで、これが必ずついてくるのがインド流、ネパールのビリヤニにはついてこないのだとか。細長い米はチベット原産のバスモティ米といって、日本の米よりもパラパラしている。
カレーにナンを浸して食べるのには慣れていても、カレーとご飯を手で混ぜ合わせるのには抵抗があるかもしれない。もちろん、スプーンを使って食べても構わないけれど、ここは騙されたと思って手で食べることを試してみてほしい。きっと新たな扉が開けることだろう。
▲向かって左上の画像から時計回りに、
1.使うのは右手だけ、お皿の外から内側に向けて食べ進める。指先を使ってよく混ぜ合わせたら、ひと口分を皿に押し付けるようにして捏ね、丸める。
2.人差し指、中指、薬指の3本で作ったスプーンですくう。中指を曲げてくぼみを作るのがコツ。
3.親指で押し出し、舌の上に乗せるようにして食べる。
バスモティ米は「香の女王」と呼ばれるほど強い芳香を放つお米。インドやネパール料理に多用される「香辛料」とはつまり、香りと辛さの調味料のこと。辛さにばかりとらわれがちだけれど、香りも味わってこそだ。
食事にあたって五感をフル動員させるのがネパール料理の作法。眺めて楽しみ(視覚)指先を使って混ぜ合わせ(触覚)香りを楽しみつつ(嗅覚)料理の歯ざわりを確かめながら(聴覚)じっくり味わう(味覚)。スプーンやフォークの利点は手が汚れないという一点のみで、逆に金臭さが香りや味を阻害してしまうことになる。
▲バスモティ米は日本のものより粘度が低いため、慣れていないと一口大にまとまらないし、口に押し込むのも一苦労だ。他の国のテーブルマナーと同じように、繰り返しの練習が必要。
たとえメニューに載っていない料理でも、事前に相談しさえすれば、可能な限り注文に応じてもらえるのがラメスのいいところ。ビリヤニと並んでネパールのお祝い事には欠かせない「ロティ」を作っていただいた。
▲米粉と砂糖、バターを混ぜて、円を描くように油で揚げたネパール風ドーナツ。甘さは控えめだが、さすがにこればかり食べていると飽きてしまう。そこで付け合わせのアルドムというジャガイモ料理をどうぞ。
▲こちらがアルドム(要相談)スパイスがふんだんに使われているわりにトゲトゲしさがないのが特徴。
▲ダルバート(1000円)はネパール風の日替わり定食。ダル(豆)のスープとバート(ご飯)のセットで、アチャール(漬物)が付く。ご飯の真ん中に突き刺さった生の唐辛子を齧りながら食べるのが本場流だそう。
▲稲作には適さない高地では、代わりにコド(稗、ヒエ)をはじめとした穀物を、蕎麦がき(ディロ、ヂィド)状に練って食べる。この黒い塊、コドコヂィド(1000円)がそう。外国人観光客には人気のない料理だそうだが、食感にさえ慣れれば結構いける。
ここで紹介したのは、ネパール料理のメニューのほんの一部。食べ方についてわからないことがあったら、遠慮なくいつでもバンダーリさんに尋ねてほしい。
▼ ラメス 二日市
福岡県筑紫野市二日市北2丁目1-26
092-929-6660
11時〜23時
定休日なし
2階にも食事スペースあり
駐車場なし(有料駐車場を使用すれば料金のうち100円を店が負担)
西鉄二日市駅東口より徒歩1分
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