筑紫野市塔原「蔦屋書店」の『カフェ バンビーノ』が、10年の歴史に幕を引き、新たな名前でリニューアルオープンする。
バンビーノは「少年」を意味するイタリア語だ。現行のメニューもイタリア色の強いものが多いけれど、今回は改めて本格的なイタリア料理店へと生まれ変わる。といっても、格式ばったところはない。最大の売りである、「書店内の本を持ち込める店」という路線はそのままに、今までのコーヒーと軽食の店から、内装を一新してメニューをグレードアップする。
食事をし「ながら読書」する人がいる。何を隠そう、僕もそうだ。それどころか、何かを読みながらでないと食事ができない。これが朝食のトーストを齧りながら新聞を読むといった程度なら問題はないけれど、一人で外食をする際は入る店と時間帯選びに苦慮する。食事をし「ながら読書」をするというのは、「ながらテレビ」とか「ながらスマホ」に比べるとかなり文化的だと思うのだけれど、はたから見ると様子が悪いらしい。中華料理屋のカウンターで見ず知らずの酔っ払いから、こんこんと説教をされたこともあった。料理を作ってくれたお店の人に、さらには食材を育ててくれた農家の人に、ひいては米粒に宿る3人の神様に失礼だというのだ。まったくその通りでグウの音も出ない。
お店に対して気を遣わざるをえないのも困りものだ。混んでいる時間を避けるのは、ひとつの席を他の客よりも長く独占することに対する配慮だ。マルチタスクをバランスよく処理できているならいいのだけれど、本に没頭して手元が留守になることも珍しくない。ふと我に返ったあとで、あわてて皿の残りをかっ込んだりする。決して口に合わないわけではないんですよ。ちょっと本が面白すぎたんです。そう、本が悪いんです。ハハハこやつめハハハハハ・・・と心の中で言い訳する。だから、入る店は漫画が常備されているような大衆食堂や、変にこだわっていないラーメン屋、織り込み済みの喫茶店が多くなる。こじゃれたイタリア料理店などもってのほかだ。本来ならば、スパゲティほど読書に適した食べ物はないというのに。
それなら外食しなきゃいいじゃないというツッコミは結構。わかっちゃいるけどやめられない。試したことがある人になら同意してもらえるはずだ、読書と食事(お気に入りの店だとさらに)はなぜこうまで相性が良いのか。
バンビーノの森崎裕希氏は言う。
「本場のイタリア料理店というのは、本来そういった客に暗黙のルールを強いるようなスタイルは珍しいんです。中には本当に格式の高い店もありますが、ほとんどは本を片手にリラックスした時間を過ごせる店ばかりなんですよ」
イタ飯がきらびやかなバブル経済の象徴だったのは昔の話だ。最近は肩肘張らないお店も増えた。しかし、食事どきはやはり気を遣うし、本の持ち込みOKを公言している店はなかなかない。
▲バンビーノとしての営業は、あと数日だ。それはそれで寂しくはある。よく眺めておくといいかも。細部にお仕着せではないスタッフの思い入れが注ぎ込んであって、思わず感心してしまったりする。
▲書籍だけでなくCDを聴くこともできる。
▲「ながら御飯」のために考案された食事といえば、有名なところではサンドイッチがある。画像は現バンビーノの生ハムとクリームチーズのサンドイッチ(400円)とコーヒーセット(+150円)本は宮部みゆきをチョイスした。ちなみに、コーヒーのお代わりは+50円。
改装工事は14日から18日の予定だから、この記事が公開された時点では何も変わってはいない。また、カフェの備わった蔦屋書店は他にもあるのだけれど、今回イタリア料理店に生まれ変わるのは筑紫野店のバンビーノだけだ。そこらへんの事情に前出の森崎氏のプロフィールを含めて、オープン後に新生バンビーノのお店紹介をしたい。なんにせよ、これで行きつけの店が増えるのは間違いない。美味しい料理に舌鼓を打ちながら本に没頭する時間を思うと、19日が待ちきれない。
▼カフェ バンビーノ
福岡県筑紫野市塔原東5-11-5(地図を表示する)
092-918-5733
営業時間 10時~23時
定休日 なし
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