九州

金継(きんつぎ)で蘇る陶器に景色が宿る

毎日愛用している大切でお気に入りの茶碗や湯のみに、不注意でひびをいれても、見事に蘇る。「金継(きんつぎ)」と言って、割れや欠け、ヒビなどで駄目になった陶器を修復する技法のおかげだ。
私事で恐縮だが、目を凝らさないと見えない程の細いヒビが入った湯呑みだが、修復できると聞いたので、TSG竹田総合学院に工房を持つ陶芸家の甲斐哲哉さんにお願いした。
まず、用意するのがこれ、「本漆」だ。かぶれないように、最新の注意が必要だ。
「本漆」を、竹のヘラを使って小麦粉と練り合わせ、麦漆を作る。これが、割れた陶器をくっつけたりヒビを埋める接着剤の役目をする。
次に、ひび割れに、麦漆を塗りこむ。
塗りこみを終えたら、乾燥させる。漆を乾燥させるには30℃程の適温と60%から70%程度の水分が欠かせない。作業を終えた湯呑みと水分を補うための濡れ雑巾を段ボール箱に入れ、蓋を閉じる。
簡易だが、室(ムロ)状態にし、屋内の日当たりのいい場所に置く。乾燥までには、大きさにもよるが、早くて2、3日で、概ね一週間ほどを要する。
充分乾燥したら、金箔の出番。純度99%と言うから、ほぼ純金だ。
まずは、本漆を塗りこんだヒビの部分に、金箔を定着させる粘着剤としての、漆を塗るが、ここで使用するのは、かぶれの心配がない「新うるし」だ。
「新うるし」は金箔を定着させるためで、ヒビの部分に塗り込んだら、金箔を竹へらで塗るように置いていく。

金箔を置いて乾燥させたら、再び「新うるし」を塗りあげて乾燥させて完成だ。
使えなくなった陶器が蘇ってくれるだけでも嬉しいが、金継には、金箔ならではの輝き、色合いが、元の湯のみにはなかった風情を漂わせてくれるのが魅力だ。聞けば、「金継の世界では模様ではなく景色なんですよ」と甲斐さん。その景色が、お供の羊羹の味を、ぐんと後押ししてくれた。
金継は、割れたり欠けたりした器を漆で接着し、継いだ部分を「金」で装飾しながら修復する、日本の伝統的な器の修復方法だが、その技法を継ぐ甲斐哲哉さんは「昔は、わざと器を割り、金継で修復して別の風情、風景を楽しんでいたんです。ワビ、サビの世界ですね」と。なるほど、と納得だ。金継ならではだ。幸いに蘇ったの湯のみだが、どうせなら、もう一本ひび割れがあってもいいかも、と思ってしまった。
なお、金継には、かぶれる心配のない「新うるし」を使用するお手軽なタイプもあり、甲斐さんは「新うるしだとかぶれの心配もないし、短時間で完成するので、ご自分でもできますよ。グループでの希望があれば、ワークショップも開催しますよ」と。
因みに、この程度の破損状況でも、「新うるし」を使う簡易な技法だと、かぶれることなく、自分でもできるようになるそうだ。
新うるしと真鍮(しんちゅう)の粉末を練り、破片をくっつけていく。仮に、破片が小さ過ぎて失くしてしまっても、「大きさの程度にもよるがパテで修復できる」そうだ。

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